×センパイ

しばさん

新しい視点に出会う、おもしろさ。| Hello! Senpai. Vol.07

こんにちは!NPO法人DNA 授業「未来の教室」学生プロジェクトチームの「ぱぴこ」こと熊谷です。

”群馬の10代と社会をつなぐ”「Hello! Senpai.」のインタビュー第7弾!
今回は「しばさん」にインタビューしてきました。

しばさん
旅行会社、旅館の支配人、農家、塾の講師などさまざまな仕事をしてきた経験を持つ。授業「未来の教室」には、2016年からセンパイとして参画。将来の夢は群馬県内で「ビリヤード場の親父」になること。

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もう無理だな、と思って勉強しなかった

──よろしくおねがいします。しばさんはどんな高校生だったんですか?

しばさん:自分が通っていた高校は、入学する前の春休みに1学期にやる内容を宿題で出して予習させるんだよね。大学入試の問題もあったりするから、きちんと予習しておかないと高校の授業についていけないよ、って話なんだけど、自分はその事前情報を誰からも教えてもらってなかった。今思えば情報を集めておけば良かったんだけどね。
だから、宿題は出されたけど、習ってないだけに問題を解くのも一苦労で。

なんとか頭をひねってとりあえず解くだけ解いたんだけど、もちろんやり方が合っていないわけさ。でも事前に知ってる同級生たちは、中学の時点でもう高校の勉強を始めてたり、周りの先輩や親戚から教科書や参考書とかを借りてこなしてる人がほとんどだったみたい。
春休みのあと1発目の実力テストが4月の末にあったんだけど、そのテストの範囲が春休みの宿題でさ。

高校に入る前の春休みの過ごし方を完全にミスった自分は、そのテスト成績も学年で370人くらいいた中で、後ろから6番目。(笑)中学時代は割と勉強はできる方だったから、その立場から一気に下に落ちた感じで。同級生との差が開いちゃって、高校の勉強ついていける気がしなくなっちゃったんだよね。

──つらくなかったですか?

しばさん:いやつらかったよ。でも周りはどんどん先に進んでいくし、追いつける気もしなくて、半ば諦めて勉強しなくなっちゃった。

──そんな高校時代をしばさんはどうやって乗り越えたんですか?

しばさん:乗り越えたと言えるかどうかは微妙だけど、勉強に関してはほとんど何もしなかったね。 勉強はやる気なかったんだけど、隣町の高校と1年に1回やる「定期戦」(運動会の対抗戦)の実行委員は一生懸命やってた。勉強じゃない場所に居場所を見つけたというか、そんな感じ。

体格がよかったから目立つのもあったし、結構人と話すのが好きで。実行委員として生徒をまとめる立場だったから、学校の中でも自分は実行委員の人っていうイメージがすごく強かったと思う。

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下を向いてやる気を出せないでいる子が、ちょっと視線を上げられたら

──しばさんは、なぜ授業「未来の教室」に関わることにしたんですか?

しばさん:自分の高校時代を振り返ると、「未来の教室」みたいに「外部から関わってくれる人がいたら、人生変わってたかもしれないな」って思うところが昔からあったんだよね。自分と同じとは言わないけど、似たような感じで卑屈になってる子って多いんだろうなってすごく思っていて。だから、「未来の教室」の企画を見た時に、「あ、これまさにそういう子たちの視線を引っ張り上げられる可能性があるかもしれない」って。
引っ張り上げられるっていうと上からになっちゃうからあんまり好きじゃないけど、外から刺激することでなにかのきっかけになる可能性があるなっていうのがおもしろいなって思って参加させてもらった。

下を向いてやる気を出せないでいる子が、ちょっと視線を上げられる感じになれたらいいことだろうなっていうのがあって。

あと参加して感じることは、人それぞれ生活してきている環境って違うし、それって年齢関係ない。高校生も、高校まで生活してきた環境の中で自分自身の視点って持ってるんだよね。だから、生徒と関わっていると「ああ、そういうものの見方もあるか」って新しい視点に出会える。そこがおもしろいなっていうのはすごくあるね。そういう意味では、自分自身の学びになるっていうか、視野が広がるなって感じる。

──しばさんがこれまでに関わってきた中で、印象的だった生徒の変化や言葉って何かありますか?

しばさん:一番印象的だったのは、何年か前の「未来の教室」の時の生徒かな。その生徒は、周りが気を遣って接するほど尖

っていて。でも、その生徒が尖っていた理由は、入学直後に学校の物品を壊したからみたいだった。それが意図的に壊したんじゃなくて、不意に体が当たって壊しちゃったんだって。でも周りにはわざとやったって見られて、「危ないやつ」ってレッテルを貼られちゃった。周りがそういう風に評価をしてくるから、そこに抗うのも「めんどくさいからいいや」っていう感じでその生徒は卑屈になってたの。

でも話を聞いてみると、びっくりするくらい真っ直ぐだし、素直な面もある。だから、自分の高校時代の経験を伝えた上で、「意固地で居続けるんじゃなく、自分自身の良さをもっと引き出すために、前向きな姿勢で色んなことに積極的にチャレンジしてみよう」、そう伝えた。

話を終えたとき、その生徒は寝そべっていたんだけど、無言で『起こしてくれよ』と手を差しのべてきた時は、ちょっとじわっときたね。

──「じわっときた」って、どんな気持ちでした?

しばさん:気持ちが通じた感があるというか。言葉で伝えるのは難しいんだけど、その生徒と「つながったな」って感じた。自分からも話したし、相手からも話してもらって、綺麗に言葉のキャッチボールができるようになった。

人とコミュニケーションとる時って、お互いにどこかバリアみたいなものを張って喋ってる気がするんさ。自分の中の間合いみたいな。「ここからこっちは入ってこないで」っていうのがある気がするんだけど、それは多分親密度の割合によってバリアの厚さが違うと思う。その生徒とは、そのバリアがほぼなくなった仲になれたんだよ。それで、じわっときた。

できる限り本音の部分を喋ってほしいなっていうのは思っていたんだけど、彼が最後に手を伸ばしてくれたことで、ちゃんと心を開いてくれたなって感じて、感動した。

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人と話すことで自分がわかる

──しばさん自身が人と話すときに大切にしていることってありますか?

しばさん:話す時に年齢は意識しないってことかな。特に自分より年下の人たちにはね。そういう喋り方のほうが楽しいんだよね。共通の話題があった方が話っておもしろいと思うんだよ。人と話すって、そこを探っていくものかなって思ってる。この人との共通点はどういうところがあるかなっていうのはみたいし、その人の見方も勉強したい。

もしかしたら結局自分のことを知りたいのかもしれないね。共通の話題を通して他の人との違いを見ることで、自分がわかることってあるじゃない?自分ってどういう人間なんだろうってところに興味があるのかもしれないな。たまに出てくる「こういう一面あったんだ」っていうところが見つかるとおもしろい。その発見のおもしろさは人に対してもだし、自分に対してももっとそう思う。

人と喋ることで自分も成長できる気がするから、そこが好きなんじゃないかなって。喋る相手も自分探しが好きであってほしいみたいなところがある。喋っていれば喋っているほどどんどんお互い楽しいから。

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しばさんの話しやすい、温かい雰囲気の秘密はどこにあるんだろう。そう思って、しばさんにインタビューさせていただきました。

自分の背景や属性と、相手の背景・属性は違っていて、そこからうまれる考え方、視点も違うからこそ得られる学びに面白さ、楽しさを感じる。

人と話すことを楽しみつつ、「違う部分」もまるごと受けとめてくれるしばさんだから話したいと思うのかもしれない、と思いました。

今回私が感じた温かい雰囲気を、今度は私と話す誰かに感じてもらえるように。話す中で出会う一つ一つの学びを大切にしていきたいです。

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[取材・文・写真]熊谷 [編集]櫻井

※記事内に登場する「未来の教室」は、NPO法人DNAのキャリア学習プログラム授業「未来の教室」を指しています。
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