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とみー

生徒と、仲間と、学び続ける。 | Hello! Senpai. Vol.04

こんにちは!NPO法人DNA  授業「未来の教室」 学生メンバーの「みゅうつー」こと櫻井です。

”群馬の10代と社会をつなぐ”「Hello! Senpai.」のインタビュー第3弾!
今回は「とみー」こと富田さん(富岡:社会人センパイ)にインタビューしてきました。

とみー(富田)
富岡市内で製造の仕事をしている。2019年5月より、富岡の中学校に授業「未来の教室」を届ける社会人センパイとして授業に関わり始める。富岡で平日夜に開催しているセンパイ同士の学び合いの場、”オープンデー”は皆勤賞。様々なイベント、コミュニティへ参画し、常に学びを追求している。

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卒業できたっていうのが初めての経験で。

── よろしくお願いします!授業はとみーさんにとっては地元の中高生と向き合う時間になりますが、とみーさんはどのような中学・高校時代を過ごされましたか?

とみー:小学生のときに調子が悪くなって、それがトラウマになって不登校になって。小・中と不登校だったんだけど、数学を好きになってから、少しずつ授業に出られるようになりました。高校は、自分で通える近くの定時制高校に通っていました。しばらくは学校に通うことに精一杯だったんですけど、高校3年生のときに、好きだった数学をもっと勉強したいと思うようになって。数学検定の準2級を受けてみて、受かって。定時制は卒業までに4年間あるので、4年生のときに2級を受けてみようと意識して勉強して……。
振り返ると、自分にとって充実した時期だったな、と思っています。数学を通して、高校で学べたなって実感がありますね。

それに、高校4年間、無事に通えた。
入学式から参加して、授業を受けて、卒業できたっていうのが初めての経験で。それが少し自信になって、卒業後の進路を思ったときに、中学の時の自分のままだったら考えてもいなかった大学進学を目指してみようって思えました。

── とみーさんが授業に関わり始めたきっかけを教えてください!

とみー:きっかけは今年の2019年4月に、ある”センパイ”に「こういう学びを平日の夜にやっているんだけど興味ある?」と声をかけてもらったこと。その時は「ちょっと厳しいかもしれない」と答えた覚えがあります。

── そう声をかけてもらったとき、どういう印象を抱きました?

とみー:そのときは、歩きながら「こういうのやってるんだけど興味ある?平日の夜空いている?」って話を簡単に、軽くしていたくらいで。何をしているかっていうのを知らなくて。その後にどういう活動をしているのか、自分で調べてみました。
そうこうしていたら、たまたまゴールデンウィークに、授業をつくるスタッフと”センパイ”とが関われるイベントがあって。ひとり、ふたり知ってる人がいるだけだったんだけど、そこに行ってみて。
スタッフのみなさんから見たらきっと、全く知らない人が急に飛び込んできたって感じだったと思います。
最初話を聞いたときは断ったけど、あとで調べてみたらもっと知りたいな、詳しく話を聞いてみたいなっていう好奇心が生まれて、イベントに参加させてもらいました。

── それってすごいですね。学びたい!って意欲を感じます。その意欲って、どんな経験から生まれたものですか?

とみー:もともと、月に1回前橋でのセミナーに行っていたんですよ。学びが得られたらなあと思っていて。でも、富岡から前橋ってなると移動に時間がかかって、あまり参加できなくて。富岡なら近いし、たくさん参加できるかなと思って。
「学びたい」っていう気持ちの源は、学校に行ってなかったことかも。大学に行って、いろんなことを知って、もうちょっと勉強したいなって思って。
就職してみてさらに、「あのときあれ学んでおけばよかったな」って後悔がいっぱい出てきて。小・中って勉強していたらもっと色んなことに挑戦できたのかなぁっていうのと、大学時代にもっと活動していればなぁって。大学でも、サークルや部活はやっていなくて、でもこういう活動を当時知っていたらやってみたかったなあと思うんですよ。学生時代の後悔を取り戻したくて、いま学びたいって思ってるんだと思います。
実は今年の2月、大学院の受験をしてみたんですけど、落ちちゃって。じゃあどうしようかなって思ったときに、学校以外の場で学んでみようかなって思って。だから、学べる場所を探してました。

(数学の教科書を友達から借りて、1か月かけて写したノート。分厚いノートからは、数学を学ぶ気持ちの強さが伝わってきます。)

地元で知っている人が増えていくうれしさがあります。

── その「学びたい」気持ちに突き動かされて、飛び込んだイベントはどうでしたか?

とみー:この人たちの活動はあったかい雰囲気なんだろうなぁと感じました。参加している人たちの話し方とか、やり取りを見て、みんながみんな、その場が楽しそうで。いろいろ聞いてみると、人とのつながりで参加している人もいれば、地元のつながりで参加している人もいて、その場の雰囲気をみて、あったかいなあって思ったんです。

── 実際に参加してみても、そのあったかさを感じる場面ってありましたか?

とみー:そうですね。”オープンデー”に参加してみて、厳しい指摘もいただくけど、それ私のためを思ってのことだし。自分はこうだろうなって思っていることも、私はこうしてるよって。「あ、そういう方法もあるんだ。じゃあ実際こういうアプローチをしてみようかな」って。自分にはないもの、自分にはあるものを、相互共通で補完しあってるんだって感じました。

【オープンデー】
授業「未来の教室」に参画するセンパイが集まって開いている練習会。授業でも大切にしている対話を用いながら、生徒との関わり方、授業の進め方などを相互研鑽しています。

── 実際に”オープンデー”に参加してみて、得られたものってありますか?

とみー:同世代の人たちがこうして活動していることを知って、驚きとうれしさがありました。知り合いが増えて、会う度に「また痩せてませんか?」「いや痩せてませんよ(笑)」ってお決まりのやり取りをする人がいたり、町で会ったときに話をするようになったり。
それは今までになかったことで、”オープンデー”に通い始めて生まれたことですね。年上の”センパイ”の話が聞けたり、アドバイスをもらえたりすることにも、この機会がなかったら出会えなかったかもしれないし。地元で知っている人が増えていくうれしさがあります。

当時の自分だったら、自己開示はできてなかった。だから、生徒の姿勢や言葉には精一杯向き合わないといけないと思っています。

── “オープンデー”で準備をしてのぞんだ初めての授業で、印象的だった生徒との関わりはありますか?

とみー:たまたま、生徒が漫画を描いている話になって。私も小さい頃絵を描いてたけど、漫画までは描けなかったなって話をして。「どういう漫画描いているの?」って聞いたら、「ドラえもんみたいな、あたたかい漫画を描いている」って言っていて。
「他にも漫画には色々あるけど、なんでドラえもんなの?」って聞いたら、「自分が落ち込んでいるとき、お兄ちゃんが慰めるためにドラえもんを貸してくれた」って話をしてくれて。
目はキラキラしてるけど、ゆっくり、考えながら話してくれて。これが対話だなって思って。

── そうして生徒が話してくれたときにどう思いました?

とみー:落ち込んで、お兄ちゃんが漫画を貸してくれたことって、別に話さなくても済むことじゃないですか。「どういう漫画描いてるの?」って聞いたときに、「ドラえもんが好きなんです」で済ませられることだと思うけど、普通の会話なら話さない心の奥にあることを話してくれた。
短い時間だったけど、生徒が「この人になら話してもいいかな」って思ってくれたんじゃないかなって思うと、嬉しかったな。

── 生徒から学んだことはなんですか?

とみー:私が中学生のときに置き換えると、こういう授業があったときに適当にやるか、参加しないかだと思うんです。でも、実際に対話をしていて、年上年下関係なく、言葉にすることも、書くことも、表現することも、「自分はこう思うんです」って、本気で考えていること、口にしていることがあって。当時の自分にはこういうことはなかったな。
授業では、相手の言ってることはメモしていたけど、自分の意見は書いたことがなかったから、書くようにして。じっくり考えて、自分なりの答えを出そうとしているところです。
私が中学生の頃は、焦ると「どうしようどうしよう」って思って、本当はこう思ってるけど今の時間はこう言おうかなって済ませようとすることがあったけど、授業「未来の教室」では、生徒が一生懸命考えている。授業に取り組む姿勢が前向きだなぁ、真面目に取り組んでいるなぁと思います。
当時の自分だったら、自己開示はできていなかった。だから、生徒の姿勢や言葉には精一杯向き合わないといけないと思っています。

── そのために、何を大切にされていますか?

とみー:相手の言葉を、そのまま受け止めるけど、それだけじゃなくて、言葉の背景も受け止められるようにしたいなって思っていて。聞きながら、この子はこういう発言してるけどどういう意図を持って発言しているかって。同じ言葉でも人それぞれ捉え方が違うので、表情だったり、仕草だったりを、集中して精一杯汲み取ろうと思って。自分なりに、考えながら聴いています。

── とみーさんのお話を聞いていて、とみーさんにとって「学び」は本当に大切なものなんだということを感じました。学び続けるということは、自分自身や、生き方を形づくることであるような……。そこで、これを最後に聴いてみたいんですけど、とみーさんにとって、「学び」ってなんですか?

とみー:「学び」っていうのは、自分の中では良くも悪くも挑戦。今まで知っていることへの上乗せだったり、知らないことへのプラスだったり。それは今すぐ活かされないかもしれない。でも、何かしらの糧になるかなって思っていて。「学び」は勉強だけじゃないんだなって思って。
昔は「学び」って言えば勉強とか、セミナーに行くことだと思っていたけど、人との出会い、その場に継続的に参加して、色々なコミュニティを築くこと、人付き合いも「学び」だなって。そういう「学び」に挑戦していきたいな。

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授業「未来の教室」を含め、様々な機会で学び続けているとみーさん。
晴れやかな表情で、豊かな学びを話してくれるとみーさんのお話を聞いていると、自ずと学びたい気持ちが湧いて来ます。
学びは挑戦。その過程には、壁にぶつかったり、下しか向けなくなったり、足を挫いたりするかもしれないけれど、その先には、うれしさ、心強さ、あたたかさがきっと待ってる。
とみーさんから、学びへ挑戦する勇気をもらいました。
一歩、踏み出したい、私も!

[取材・文・写真]櫻井 [編集]沼田

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