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ふじさん

生徒とともに、「変わりたい」に向き合いぬく。 | Hello! Senpai. Vol.03

こんにちは!NPO DNA スタッフの「なんしー」こと南条です。

”群馬の10代と社会をつなぐ”「Hello! Senpai.」、インタビュー第2弾!

今回は「ふじさん」こと藤井さん(富岡:社会人センパイ)にインタビューしてきました。

ふじさん(藤井)
富岡市内で、事務の仕事をしている。2019年5月から、富岡市の中学校に授業「未来の教室」を届けるセンパイとして参画。授業では、周りの目が気になりながらも自分なりに変わろうとする経験談を届ける。好きなお笑い芸人は、お母さんあるあるをネタとする「しゃかりき」と「パンサー」。

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素を出せる環境ってどうにつくっていくんだろう?

── よろしくお願いします!授業「未来の教室」は中高生向けのプログラムなんだけど、ふじさんはどんな中学・高校時代を過ごしたの?

ふじさん:高校時代を一言で言うと、結構自分のやりたいことができてたなって思います。友だちと公園で自転車乗り回してたりとか、すっごくバカなことして、すっごく笑ってた。私の好きな写真を撮ることも、友だちとバカやって笑うことも、やりたかった生徒会もやっていたから。

── そうだったんだ!中学生の時から、やりたいことやるって感じだったの?

ふじさん:中学と高校の自分は真逆ですね。中学生の時は、自分の素を中々出せなくて、ちょっと素を出せたなと思うと、「あれ、いつもと違うね」って言われちゃう。でも、自分はそっちのほうがラクなのにってもやもやしちゃって。
けどある日、仲いい幼馴染と遊んでたら、自分がすごく素を全面に出していたんですよね。友だちも盛り上がっていて、自分も楽しいし相手も楽しそうにしてるし、「こうに素を出してる時間がやっぱりいいな」って思うようになって。
そこから、「素を出せる環境ってどうにつくっていくんだろう?」って思い始めて、ちょっとずつ口角をあげる練習とかをしてみたりして、素を出せるような環境を増やしていこうって思って増やしていきました。

── 中学校時代に色々試行錯誤をして、高校のときは素を出せたの?

ふじさん:高校は、同じ中学の子が男の子ひとりしかいなくて、「これは最初っから飛ばしていくしかないぞ!友達できないぞ!」と思ってしょっぱなから素を出そうって思っていました。そうしたら、自分を受け入れてくれた4人グループがいて。その4人でいるときは思い切り素の自分でいられるようになりました。

気持ちを、”お豆腐みたいに”そのまま取り出して、分かり合いたい。

── そうだったんだね。今、富岡の中学校で授業「未来の教室」を届けているけど、どんな気持ちで生徒と関わっているの?

ふじさん:私と同じように、自分の素を周りに見せてない生徒に、そこから抜け出すルートの手がかりを伝えていきたいですね。もし手がかりにならなかったとしても、抜け出せた人が近くにいるということを知ってもらいたいです。
授業に参加する前は、別に自分って語ること全然ないし、淡々と生きてたなって思っていたんですけど、いっぱい話していくうちに、自分も悩んでいたなっていうのを思い出して。その悩みが地味につらかったなって。今は地味って思っても当事者にとってはつらいから、その地味なつらさを、ちょっとでも軽くできたらと思っています。
私が変われたからこそ「ずっとこのままじゃなくて、こうやってこの現状を変えられた人がいるんだよ、諦めちゃダメだよ」って伝えたいな、と思って関わっています。

── ふじさんが生徒と関わるときに大切にしたいと思っていることはどんなこと?

ふじさん:生徒の気持ちを心から、”お豆腐みたいに”そのまま取り出して共有していけたらなと思っています。悩んでいる人って心が繊細だと私は思うから。そのまんまの姿で。そっと傷つけないように。

── どうしてその姿勢大切にしているの?

ふじさん:前に対話の姿勢について勉強したとき、生徒の使った言葉をそのままを使うことが大切、ということを学んで。
例えば、生徒が「数学が得意じゃない」っていったことを、センパイが頭の中で得意じゃないということは「苦手なんだ!」って変換して、「数学苦手なんだね」って言葉を返すことは、お豆腐崩しちゃってるなって思ったんです。崩しちゃうと、やっぱりその生徒が本当に思っていることじゃないんだろうなって。そのままの気持ちを共有して、気持ちを分かり合いたいんですよね。

生徒のなかに、“変わりたい”意思がある。

── ふじさんは生徒の気持ちを大切にしているんだね。そんなふじさんが生徒から学んだことってなに?

ふじさん:授業に参加してみると、センパイと面識がないところから始まって、話していくうちに本音を教えてくれる生徒の姿をみることができました。その裏側にはもちろん”ホームセンパイ”の手助けもあるけれども、生徒自身に”変わりたい”という意思があったからだと思いました。

── へー!どういうところで”変わりたい”っていう意思を感じたの?

ふじさん:授業に参加したとき、私は”語るセンパイ”だったんです。語っているとき生徒のみんなが、こっち見てちゃんと真剣な顔で聴いてくれていて。こんな語りでも参考にしたいって思ってくれているのかなって。私の語りのあらすじに興味を持って聴きに来てくれたから、同じような悩みがあって、参考にしたいって思ってくれているのかな、変わりたい意思があるのかなって思いました。

【語るセンパイ・ホームセンパイ】
授業では、自身の経験を中高生に伝える”語るセンパイ”と、生徒に寄り添い対話する”ホームセンパイ”がいます。ホームセンパイは、一緒に語りを聴いたり、対話を通じて未来について考えたり、生徒とともに考え、ともに過ごします。

── ふじさんは生徒たちに“変わっていけるんだ”って伝えたいということだったけど、いまふじさんが変わりたいって思っていることってある?

ふじさん:いま同じ部署の中にすごく仕事できる人がいて、なにか困ったらこの人に聞けばなんとかなるみたいな。他の部署の人が、上司の次に頼りにしているくらいすごく仕事ができる人なんです。プライベートで関わると、面白くてかわいくて、切り替えが出来て、要領がいいし、そういう頼られる人になりたいっていう夢があります。

── ふじさんはその理想の人に近づくために自分なりに積み重ねていることってあるの?

ふじさん:広い範囲の知識が必要だなって思って。同じ部署の他の担当の仕事もちょっとずつ覚えようとしていて、来年になったら自分もその担当になるかもしれないし、そうなったら、他の人に「これどうするんですか?」って言われたときに「こうです」って迷わず言える感じになりたいです。

── いまもふじさんは変わろうとしているんだね。かといって、うまくいくことばかりじゃないじゃない?そんなとき、ふじさんはどうしてるの?

ふじさん:ミスしたときは、結構落ち込みます。「ミスしちゃった、どうしよう…」って。そんなときは、周りの人の大丈夫だよっていう励ましもらったり、歌うたって気分スッキリさせて立て直しています。そのあとは、できているかは、わかんないけど、今度は求められる以上のことをしてやろう、って思ってやっています。

ふじさんが、生徒のそのままの気持ちを大切にしたい想いを感じました。それはふじさんが経験してきたからこそ、苦しさやつらさがわかること、その気持ちに寄り添って、ともに考えたいというふじさんの根っこを知ることができた気がします。
そして変わり続けようとするその姿が、生徒にとって勇気づけられることそのものなのだと思いました。変わり続けることは楽なことばかりではないけど、変わりたいと思う自分の気持ちを大切に、チャレンジしていけたらとわたしも思えました。変わり続けようとするふじさんとまた一緒に授業を届けられることが楽しみです!

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[取材・文]南条[写真・編集]櫻井

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