【探究ストーリー】高校生の学びの姿?「探究学習 スタートアップ編」を通じて生まれた数々の学び

「明治以降、戦後最大」ともいえる教育改革の波が来ています。現代を生きる10代は、コロナ禍と教育改革の2つの歴史的な出来事を経験する世代と言えます。

その教育改革のひとつが、「総合的な探究の時間」です。「国語」「数学」「理科」「社会」・・・といった教科学習と同じように「総合探究」の授業時間が設けられています。

またこの他にも「古典探究」や「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」「理数探究基礎」「理数探究」など「探究」のついた科目が7つも新設されます。「探究的な学び」が、高校において中心的になっていくことが表れているようにも思います。(“理数”等の理科と数学の教科融合も見受けられます)

文部科学省によると「総合的な探究の時間」における課題と生徒との関係について、次のように表現をしています。

このようなことを前提に、探究学習 スタートアップ編では「探究学習」を「自分なりの問いを、自分なりの方法で、自分なりの答えを見出す学び」と定義しています。

「総合探究」に関することは、こちらの記事を併せてお読みください。

【コラム】「10代の成長と学びを、学校と地域で支える意義」-読売新聞 連載記事に連動して

本記事では、2020年6-7月の約2か月間、全5回で行った「探究学習 スタートアップ編」に取り組んできた高校生1年生の学びの姿(探究ストーリー)を紹介します。

はじまりは、コロナ禍で休校中の自宅からー

授業のはじまりは、2020年5月。一斉休校がまだ続き、自分が通う学校に数度しか行ったことがない高校1年生。

私たちが「探究コーディネーター」として関わっている高校では、休校中でも教員のみなさんが一丸となって学習課題のプリント配信や電話連絡のみならず、ICT(メールやチャット、リモート電話など)を活用して、「生徒とのつながり」を絶やさぬように取り組んでいました。

その甲斐もあり、まだ数度しかリアルで会ったことのない高校1年生と教員は、「もう何回もあったかのような関係」が、休校明けの6月にあったと言います。

休校中の「総合探究」に関しては、①学習動画の配信と、②自分の興味・関心を掘り下げるワークを通じて学べるように環境を整えました。


「学習動画の配信」は、高校1年生によって1個・2個上の先輩のプレゼンテーションの動画を教材として用意します。先輩の学びの姿を見ることによって「自分もあんな風に学ぶことができるんだ」という身近なロールモデルの獲得と、「学校再開したらこんなことを学んでみたい」という学習意欲の醸成につながります。

「興味・関心ワーク」は、マインドマップやウェビングマップという思考整理のツールを活用して、自分の内になる価値観や考え、没頭していることを“見える可”します。15年間の人生、それぞれの経験をし、それぞれの気持ちを抱き、それぞれの価値観がある。

「自分には何もない」と捉えがちな思春期世代の時期だからこそ、“自己を見える可”する営みには、「自分には何かある」という自分に対する期待感につながります。

そうして休校中でも、学びを深めながら、いよいよ学校が再開となりました。

高校生の学びの姿?3つの探究ストーリーの紹介

学校が再開してからも、分散登校の時期が1か月ほどあったため、1つのクラスが半分に別れ、別々の時間帯に登校していました。

「総合探究」の授業は、基本的に同じ時間帯(たとえば6時間目)に、それぞれのクラスで授業が始まります。授業担当は、各担任。そうなると、担任の先生の負担は大きく、同じことを何回もしなくてはいけなかったり、クラスによっては知識・情報伝達の部分にバラツキがうまれてしまうことにつながります。

それらを解消するために、探究担当の先生方と見出した答えがあります。それは、知識・情報の伝達の部分は「学習動画に切り替えよう」ということでした。

たとえば50分の授業のうち、15分は学習動画、30分はワーク、5分は振り返り・まとめという流れです。このような流れにすることで、担任の先生は「学習動画」を流し、その後にそれぞれ「ワーク」の案内とサポートを行うことができるようになります。

全5回「探究学習 スタートアップ編」では、①キーワード設定/問いづくり、②問い検証/実践プランの作成、③実践プランの共有、④学びの整理、⑤学びプレゼンテーション大会の流れで展開いたしました。

そのように一連の総合探究で学んできた高校生は、「どのような問いを立て、どのような方法で、どのような学び」を実現してきたのでしょうか。次の3つは、高校生の学びの一部紹介です。

「野球の試合の流れは、どこでつくれるのか?」

「群馬には、戦争を感じさせるものはあるか?」

「“とりついていない時期”の最近は、どうやって生き延びるのか?」

「学び」が、次の「学び」につながっていくこと-。

このような学びを創り出してきた高校生が、一連の経験を通じて「自分にとって“学び”とは何か?」についてどのような考えを抱いているのでしょうか。

ある高校生は、「学び」について次のように振り返っていました。

「学び」が、次の「学び」につながっていくこと。今回、支援のあり方を探究していく中で、実際に貧しい国の現状を知り、世界の今の現状がもっと知りたくなりニュース番組を見るようになった。また、ボランティア活動に興味を持つようになったりと、学びにはたくさんの続きがある。

covid-19流行も含めて、私たちの社会は、よく「答えのない時代」だと表現されることがあります。その時代だからこそ、「学び続けること」が大切だといわれることもあります。

それは、さながら「終わりなき学びの旅」のようなもの。この「終わりなき学びの旅」を始めるのが、文部科学省が定義する「探究学習」における学びの姿でもあります。

2020年、社会的な出来事の渦中にいる15歳-。

すでに身近な社会の創り手である高校生自身が、学びの創り手としての経験を手にできるよう、引き続き「総合探究」のカリキュラムづくりに先生方ともに尽力してまいります。そして、たくさんの10代の学びの物語に溢れるように。

高校生の気づきーあなたにとって“学び”とは?

●自分を楽しませ、わくわくさせるようなまだ見たことないものや、物事の裏側を知ること。

●生涯続いていくもので終わりがないもの。見方を変えるだけで沢山の疑問が出てくるもの。自分を成長させてくれるもの。

●自分が成長していくことへの第1歩ではないかなと思いました。疑問を解決するために調べたりするなどして行動し、学んだことから、また新たな疑問や学び生まれてくると思うからです。学びが増えて行けば行くほど、たくさんのことを考えられるようになったり、より幸せな人生を送って行けるようになるんだと思えるようになりました。

●自分で決めたキーワードに対して興味を深めたり、自分の中の「?」を解消する、アイテムだと思っています。

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