【キャリアインタビュー#02】新聞記者・高野さんから聞く「考える」と「言葉を知る」 | NPO法人Design Net-works Association

【キャリアインタビュー#02】新聞記者・高野さんから聞く「考える」と「言葉を知る」


皆さんは普段、新聞を読んでいますか?

最近は「若者の新聞離れが深刻である」などと頻繁に指摘されていますが、特に若い世代の方はあまり新聞を読まない方も多いのではないでしょうか。

「そんな新聞について、理解を深めたい!」ということで、今回のキャリアインタビューでは群馬県の地方紙、上毛新聞社の記者として働き4年目となる高野聡さんにインタビューをさせていただきました!

 


 

【目次】

1.新聞ができるまで

2.新聞の価値とは

3.高野さんの「これまで」と「これから」

4.若者へのメッセージ


 

1.新聞ができるまで 

写真①


 

高野 聡(たかのさとし)さん

1989年群馬県高崎市生まれ。大学を卒業後、2012年4月に上毛新聞社へ入社、2013年2月より同社富岡支局に勤務。現在入社4年目の若手新聞記者としてご活躍中である。


 

 

 

-まず初めに、高野さんの現在の仕事内容を教えてください。

富岡、甘楽、下仁田、南牧の4市町村を担当する富岡支局の記者として、地域の催しから事件事故、選挙まで幅広い出来事を取材、記事化しています。日頃は、役所や企業から依頼のあった取材に出掛けるほか、地域の子供からお年寄りまで、さまざまな立場の方にお話をうかがって、話題の「ネタ」をつかみ独自に記事化します。応接室、店舗、工場、学校、田んぼ、山の中まで、取材の現場は地域のあらゆるところに広がっています。

 

地方紙の特長は、何といっても地域密着であることです。群馬県民ならだれもが取材相手であり、読者でもあります。「上毛新聞なら」「上毛新聞だから」と頼ってくださる方も多いので、期待に応えなければと心をこめて一つ一つの仕事に当たっています。

 

■新聞制作には、いろんな人が、いろんな立場で関わっている!

写真②

【写真:当日の取材風景。高野さんの働く上毛新聞富岡支局内にて取材させていただいた】

 

-取材する情報は、どのように決めているのでしょうか?

たとえば、群馬県内で、行政が新しい物事を決めたり、突発的に良くない事案が発生してしまったり、畑に不思議な花が咲いたとします。そのとき、管轄する役所、関係する団体などがプレスリリースという資料をつくって、報道機関に送ってくれる場合があります。それを見て私たちは、「どれくらい価値ある話なのか」、「どれくらいの人に影響を与える話なのか」というのを判断し、取材に行きます。

「こんなこと過去にありましたっけ」と本社や取材先に相談することもあります。これで例えば、「富岡市では初めてだけど他の地域では何回もやっていた」との話だったら、珍しい話ではないと判断されます。また、自分で全35市町村に電話して、「こんなこと過去にありましたか」と聴いてみることもあります。それで「ない」となったら、県内で初めてのことですね。このように綿密にニュースの価値を分析します。

 

-取材対象が決まって、実際に取材に行くのですね。

取材は基本ひとりで行きます。持ち物は最低限、ノートとペンとカメラがあれば大丈夫です。

実際に取材していて、事前に聴いた話とちょっと違ったり、聴いている内に更に面白いエピソードが出てきたりすると、記事の方向性が変わることもあります。それを探り出すのも、記者の仕事であり、大切な力なのかなと思います。

 

取材を終えると、パソコンで原稿を書きます。原稿を書き終えたら、何回も見直します。

タダではない新聞を、どうして皆さんは買って読んでくださるのでしょうか。半分は、身近な知らないことが載っているから。後の半分は、正しいことが載っているからだと思っています。「正しい」という部分については、一つ誤りがあるだけで、信頼が失われてしまいます。そのために文章を作った自分自身が何度も見直して確認をします。事実関係であったり、人物の名前であったり、年齢であったり…。

 

-記者の書いた記事が紙面に落とし込まれるまでは、どのような流れになっているのでしょうか?

まず新聞の基本的な読み方として、見出しの大きい記事ほど重要であり、右上から左下にかけて順番に重要なものが載っています。右上にある記事がトップ記事で、「アタマ」という言い方を社内ではします。

 

書いた記事の文量は、単純に聞いてきた内容を全部つらつら書けばそのまま記事になるということではありません。たとえば、ある一部の読者にしか関係のない記事であれば、短く簡潔にまとめることが求められる場合もあります。逆に、どうしても大きく伝えたい内容の時は、周辺的な情報や、これまでの経緯を書き加えて、文章のボリュームを増やしたり、写真を大きく扱ったりすることもあります。

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【写真:2015年6月25日付の一面記事。話題毎に文字の大きさ、写真の有無などが異なることが見て取れる】

 

 

-その判断は、誰がどのようにして行うのでしょうか?

本社の方が判断します。「デスク」という言葉を聴いたことはありますか?一面、社会面など、新聞のページ毎にその日の責任者がいて、その方をデスクといいます。デスクは、記者があげてくる記事の中から一番重要であろうものから優先順位をつけて、トップ記事はこれでいこうといったことを選んでいます。

またここでも誤字脱字をチェックし、現場の記者とやりとりしながら、よりよく伝わるように段落を入れ替えたり、余計なエピソードをそぎ落とします。記者も取材先に問い合わせたりして、記事を仕上げていきます。

 

記事が仕上がったら、レイアウトを組む方のところに記事と写真が送られます。そこでデスクのある程度の指示のもと、優先順位毎に記事を組み合わせていき紙面ができあがっていきます。そのような過程を経て毎日同じ大きさの紙面に記事が落とし込まれていきます。だいたい夜遅くになりますね。

 

紙面ができあった後は、伊勢崎市にある印刷センターにデータで送られます。そこでは、画面上で見たデータと、実際に印刷された新聞紙だと色合いの違いがあったりするので、試し刷りなどします。このような最終調整をした後に、すさまじい勢いで印刷します。

 

 

少し余談になりますが、上毛新聞の特徴として、他の全国紙と比べてカラー=多色刷りの印刷が多いことが挙げられます。地域の話題のページは、ほとんどの場合カラーで印刷されているので、とても喜んでいただいております。

写真④

【写真:2015年6月24日付の地域面。ふんだんにカラー印刷が施されているのが特徴的だ】

 

その後、深夜になりますが印刷された新聞はトラックに載せられて地域にたくさんある販売店に運ばれます。販売店で、各地域に折り込まなければならないチラシを折り込んだり、雨の日だとビニール包装をかけたりします。その後、配達員の方がバイクに乗って皆さんのご家庭に配達をしています。

 

このように新聞の作成には、いろんな方がいろんな立場で関わっています。

 

2.新聞の価値とは!?

■新聞の価値は、「一覧性」と「毎朝届くこと」

写真⑤

【写真:高野さんの取材風景。実際にペン・ノート・カメラを持って取材を行っている】

 

-テレビやインターネットなど他メディアと比べて、新聞の価値とはどのような部分にあるのでしょうか?

よく言われるのは「一覧性」です。物事を一覧できるということですね。インターネットだと、自分の興味のある話題しかクリックしないことが多いですよね。対して新聞は、見開き1ページにだいたい15くらいの話題があり、いい意味で一度にいくつも目に入り、幅広く物事を知ることができます。また地方紙独特のことですと、インターネットでは収容しきれないような地域の細かな情報が載っています。お悔やみ欄、日頃の地域の話題を始め、普段隣の家に住んでいるような身近な人の情報が載っています。それが存在価値だと思います。

 

-ちなみに、高野さんご自身の新聞の好きなところはどのようなところですか?

毎朝、手元に届くことです。インターネットやテレビは、ニュースを24時間逐一伝えます。対して新聞が一日単位の情報を毎朝提供してくれることは、人間が生活する上でも結構ありがたいことなのかなと思います。要は、朝起きてから夜寝るまでの一日をどう行動するか、あるいはその日何が話題になっているかというのを人間の生活リズムに合わせて把握できるということです。これに意味があるのかなと思っています。

 

3.高野さんの「これまで」

原点にあるのは、「書くこと」

写真⑥

【写真:少し恥ずかしそうにご自身のことを語る高野さん】

 

-ここからは高野さんご自身のお話を伺っていきます。なぜ、新聞記者という仕事に興味を持ったのですか?

自分の思ったことを、文字にしておきたい、書いておきたいと思っていました。エッセイというと大げさですが、メモみたいな感じで書き留めておいたりすることです。書いていると、整理できるじゃないですか。例えば、自分が何かに怒っている時、その時の気持ちや原因を文章にしてみると、「あれ、これ自分が悪い…」と気づくこともありました。あと、言葉を勉強するのが好きでした。国語は苦手でしたが(笑)。

 

-高校時代には、実際に新聞を制作する活動もされていたと伺いました。

高校時代は新聞部でした。月1回のA3判裏表の「ミニプレス」と、毎年6月の文化祭に合わせたブランケット判20面の「文化祭号」を制作していました。購買のパンの人気調査から名だたる企業主のインタビュー、地元に存在した軽便鉄道やまちづくりの歴史まで、興味の赴くままに取材しました。興味を持ったものを調べ明かし、まとめ、多くの人に伝えるという行程の面白さを、身をもって学びました。職業に直結する原体験でした。

 

-そんな新聞記者として働かれている中で、1番印象に残っている仕事はどんなことですか?

やはり皆さんの記憶にも新しい「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録※1でしょうか。

私は、下仁田町の荒船風穴の取材を主に担当しています。昨年2014年6月の登録決定の瞬間は、下仁田町役場のパブリックビューイング会場で迎えました。登録決定を示す木槌の音でわっと湧き、万歳する町民の笑顔を写真に収めました。

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【写真:2014年6月21日の号外記事。世界遺産登録の喜びと共に富岡製糸場と絹産業遺産群について紹介されている】

 

それ以降、山の中にあって自然に吹き出す冷風を生かした資産の保護と、世界遺産を目指して続々と訪れる観光客の受け入れの両立には当局の並ならぬ努力があります。私は登録から1年たつ現在も、その動き一つ一つを追いかけ、記事化しています。他の報道機関に先んじて掲載できたものもあります。

 

一方で、十分な時間や機会を与えられながらも、思いや臨場感が伝わる記事に仕上げられなかったこともあります。悔しかったり、申し訳なかったりしました。そんな時は本社の先輩方が私と相談して記事を修正し、あるべき姿に高めてくれます。でも締め切り後や紙面に載った翌日に、どうすればよかったのかと考えます。

 

※1)富岡製糸場と絹産業遺産群は、群馬県富岡市の富岡製糸場、および伊勢崎市、藤岡市、下仁田町の2市1町に点在する養蚕関連の文化財によって構成される世界文化遺産です。暫定リストに記載された後、2014年6月に第38回世界遺産委員会(ドーハ)で正式に登録されました。

 

4.高野さんの「これから」、そして伝えたいこと

■まずは「考えてみること」から!

写真8

【写真:取材中、多くの方に声を掛けられ、そして愛されている姿が印象的だった】

 

-これから先、記者として「自分はこうありたい」という姿や理想像はありますか?

まずは、自分個人が記者として追求していくテーマを見つけることです。もちろん、日々与えられた仕事をしつつですけど。例えば今の上司の記者は、ずっと製糸場・養蚕関係のことに携わってこられて、自身も農学部のご出身で、養蚕、製糸場関係を突き詰めていきたいという風に考えていらっしゃいます。他にも社内だと、遺跡発掘関係だったらこの人に確認してみようという方がいらっしゃったりします。要するに、得意分野ですね。そういった個性やアイデンティティーといったものが今はまだないので、それを見出して行きたいですね。就活だって大変ですけれども、職業は「(その職業に)なって終わり」ではないと思っています。

 

-最後に、これから職業選択をしていく若者へメッセージをお願いします!

「働くってどういうこと?」、「どういう働き方が自分に合っている?」など、実際よく分からないという方は多いのではないでしょうか。僕もよくわかりませんでした(笑)。なんのために働くのか、職業を通じて自分が何を追求していくのかは、就職した後に考えても遅くはないと思います。

 

一つ言えるのは、なんでもかんでも「まずは考えてみること」です。学生時代は遊んでいても全然いいと思います。ただし、遊ぶにもただぼーっとしていない方がいいと思います。何かを見て感じて、「あー楽しかった、よかった」で終わるのではなくて、「自分は過去にこういう経験をしたから、これを見て今こういう感情になっているんだ」という風に深く考えてみると、自分のことがよくわかってきます。そうすると自ずと、将来就きたい仕事は何なのかが、なんとなく見えてくる気がします。僕にとっては考える作業というものが、「書くこと」であったと思います。

 

あと最後にお伝えしておきたいことは、「言葉を知る」ということです。今自分が何を思っているのか、感情を知るためには、まずは言葉を仲介しないとわかりません。新聞・本・テレビ・インターネット等なんでもいいですが、いろんな言葉を知っておけば、自分の武器、味方になると思います。なのでみなさん、たくさん新聞を読んで、ボキャブラリーを増やしましょう(笑)

 

 

■おわりに写真⑨

【写真:私たちからの質問に丁寧に答えてくださる高野さん】

 

普段は飄々としてどこかつかみどころのないキャラクターの高野さんですが、取材の中で新聞のことや仕事のことについてお話しされる言葉一つ一つに「信念」のようなものを感じました。高野さんはお話の中で「考えること」を強調されていましたが、まさに記者の仕事をする中で、良い記事を書くために信念を持って「考える」作業(=試行錯誤)を続けているからこそ、感じられたのだと思います。

 

また、新聞ができるまでのお話を聴いて、新聞がすごく価値のあるものに感じられました。普段、当たり前のように毎朝配達されたりコンビニで買えてしまう新聞ですが、それは決して当たり前なことではなく、多くの方が伝えるべき情報を読者に伝えるために試行錯誤している結果として成り立っていることなのだと感じました。これからは新聞をたくさん読んで、ボキャブラリーを増やしていきたいです!

 

最後になりますが、お忙しいところ取材に応じてくださった高野さん、本当にありがとうございました!

 

(インタビュー:海川、大澤、加藤、須賀)

(撮影:須賀)