【キャリアインタビュー#1】「いまここで、やるべきことを全力で!(前編)」 | NPO法人Design Net-works Association

【キャリアインタビュー#1】「いまここで、やるべきことを全力で!(前編)」


「自分が将来何をしているかイメージが湧かない…」

「やりたい仕事が見つからない…」

「興味がある仕事は見つけたけど、実際の仕事内容はよくわからない…」

このようなことを感じている学生の方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか? 

このような問題意識から私たちは、実際に働く社会人の方へ「キャリアインタビュー」と題したインタビュー活動を行っていきます。その取材を通して社会人の方へキャリア・働き方・ライフスタイルなどについてのお話を伺うことで、これから就職活動を行う大学生に向けて将来の選択をする際のヒントとなるような情報をインタビュー記事として発信していきます。

その第一弾として今回は、高崎経済大学の教員・研究者として働く大宮登教授に、学生時代に熱中したこと、大学教員という仕事のやりがいやキャリア研究について、また中高生や大学生へ職業選択をする上でのアドバイスもいただきました。

■学生時代の読書は自分の世界観を広げた!

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ー先生の学生時代についてお聞きます。学生時代は何に熱中していましたか?

大宮先生:そうですね。一番は本を読むことです。下宿先の人たちがみんな本を読むのが好きで、それに影響されました。高校まではスポーツ少年で、体育会に所属していました。だからこそ飢えていました。知らないことを知ることの面白さにはまり、ずっと本を読んでいました。読んだ本をもとに手紙を書いたり、議論したりしていました。自分が知らない世界が本を通じて広がり、自分の世界観・人生観が変わっていくことがうれしかったんだと思います。

ジャンルにこだわらず、経済学、社会学、政治学、文学、心理学、生態学、哲学、文化人類学、動物行動学等、次から次へと読んでいました。特に印象に残っている本は、たくさんあるのですが、強いてあげるのなら、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』や河合隼雄の『無意識の構造』です

ー学生時代にやっておけばよかったと思うことはありますか?

大宮先生:あんまりないですね。全力で駆け抜けました。やりたいと思ったことは皆やりました。アルバイトも大学生の時に30種類くらい経験しました。家庭教師、ゴルフのキャディー、道路工事、百貨店、国鉄、製造、書店、飲食店、病院などありとあらゆる職種の仕事をしました。良い経験になりましたね。旅行も、一人旅で休みのたびに出かけました。北海道や四国、兵庫、和歌山などは思い出深いですね。

■大学教員は学生の成長を見守り、社会的に価値のある活動ができる

【写真】大宮教授の授業風景。(地域政策学部演習Ⅰにて撮影)

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ー今の職業を選んだ理由は何ですか?

大宮先生:きっかけは大学3年の終わり。その頃日本は、高度成長が終わり、公害問題やエネルギー問題が噴出し、社会全体の大転換(パラダイム転換)が起こっている時でした。自分としては、それなりの企業にも行こうと思えば行けたんだけど、このまま社会にでるのはどうなんだろうと思ってしまって、自分の考え方や生き方を整理するために、大学院に行って社会人になるための猶予期間(モラトリアム)をもらおうと思ったんですね(笑)。ふつう大学院に行くって、研究者になるか、大学に勤めるために進学するんだと思いますけれども(冷静に見るとそんなコースだったんだけど)、私自身としては、そんなつもりは全くなかった(笑)。

このまま曖昧なまま就職したら自分がダメになると思って大学院に進んだ。慶応大学の大学院に進んでからも2年間の修士課程が終わる時に、さらに博士課程に進む道もあったのですが、ちょっと迷っている時に、たまたま故郷の私立の学園を運営する高校の先輩でもある理事長から「うちにこないか?」と誘われて、短大の教員になった。今から考えると、恵まれていたのですね。

ー教授という職業の魅力は何ですか?

大宮先生:人の成長の手助けができるところですね。特に、大学生は大人なので、一人の大人と正面から関われることがいいですね。人間の成長に関われるという意味では、中学も高校も同じなのかもしれませんが、特に、大学生の場合は、社会に出る前の4年間ですから。社会人となるための準備を手伝える喜びですかね。

もうひとつは、国、県、市町村などの総合計画や行動計画、各種の仕組みづくりなど、社会的に価値のある活動を行えるところも面白いですね。大学教員は、社会的信頼感の厚い職業ですね。いろいろな可能性が開けてきます。

ー逆にどんなことが大変ですか?

大宮先生:授業が大変ですね(笑)。90分間、学生の興味関心を引き付けながら、内容のある講義を続けるのは難しいですね。あとは研究論文の執筆など。基本的には仕事として、やらなきゃいけないことは楽しくないです(笑)。一所懸命、やっているつもりですけれど。

■キャリア設計とは人生全体の設計(ライフキャリア)である

ー先生が研究されているキャリア設計とはどのようなものでしょうか?

大宮先生:今一番大切なのは、キャリア設計をライフキャリアという考え方をとっていることです。以前は例えば国の職員のキャリア組とノンキャリア組という表現に代表されるように、ある職業で高い地位や影響力のある地位に上りつめることをキャリア形成、キャリアアップと言われていました。職業生活の中で高い地位に昇ることをキャリア形成という風に考えられてきたけれども、最近は人生全般を設計することがキャリア形成であると転換しています。仕事でどんなに偉くなっても、幸せでない人もいる。仕事も大事だけれど、家族や友達や地域の人との人間関係も大事ですよね。

だからいまは、キャリアを仕事だけでなく、ライフキャリアとして人生設計に近いような観点からキャリアを考えようというキャリア設計の考え方が主流になってきているといえますね。人間生活を丸ごと考えるのがライフキャリアなのだと考えています。

ーなぜ前の考え方から今の考え方へと変化したのでしょうか?

大宮先生:そうですね。スーパーやシャイン等のキャリア研究者たちの理論の深化もあるのですが、現実面でも、「仕事人間」では人生が豊かになれないからではないでしょうか。やっぱり仕事人間になって、「24時間戦えます」ということで頑張っても、ストレスが溜まりますね。家庭は奥さん任せ、「自分はもう仕事だけで生きるのだ」という生き方がいろんな問題を起こしてきています。人間が生きるっていうことは仕事も大事だが家庭も大事。また、地域の中に住みながら、ただ家に寝るためだけに帰って、地域に住みながらコミュニティに関して全く知らないっていうのは生き方としていいのだろうか。

そこでワークライフバランス、仕事と家庭をバランスよく生きる大切さが広がったのではないでしょうか。ものすごく仕事が忙しいときは、家庭のことになかなか時間がさけないっていうのはあるかもしれないけど、やっぱり、自分の生き甲斐、自分の仕事の専門性を高めることや会社の成長を考えることと、自分の家族や地域の人と暖かな関係を築いて、人間として幸せに生きるということをトータルに考えていったほうがいいのではないかと思います。

新しいサービスとか新しい商品を作るときって、けっこう会社以外の人とのネットワークでいろんなアイデアをもらったほうがいいサービスや商品が生まれるっていう時代でもあります。趣味の仲間とかそういう仕事以外の人と人とのネットワークというのがとても仕事にも生きてくる。だから仕事だけを大事にするのではなくて、その地域でのつながりのような仕事以外のつながりをたくさん持っている人は意外と仕事のアイデアを作っていくチャンネルをいっぱい持っていますね。

(後編へ続く)